2010/10/28

神奈川のお雑煮 第2回 ~ハバノリ文化圏~

伊勢原市から、小高い善波峠を越えて秦野市に入ります。

やっぱり、ここも里芋と大根を中心としたお雑煮のようです。
10人近くにお雑煮のことを聞いたとき、ひとつ、気になることが出てきました。
お雑煮に、「青のりを入れる。」という方がちらほらいるのです。

現在は、地域のお雑煮一色になることはなく、各々が様々なお雑煮を作っていることが多いので、1人の方が独特なお雑煮を語っても気になりませんが、それが2人になると「あれ?」と疑問に思い、3人になると「これはもっと確かめてみないと。」という気になります。

先祖代々、ここに住んでいる方だろう。と思われる方が、「青のりを揉んでお雑煮に入れる。」と言うのが続くと、無視できません。

秦野市史には、「大根と里芋」の記述だけで、「のり」については書いてありませんが、こうなったら、腰をすえて、聞きまわらざるを得ません。

道を歩いている方や、お店の方に、尋ねます。

「のり」の話はたまに出てきますが、どうも決定的な話が聞けません。
暗くなりかけたその時、お店から出てきたおばあさんに声をかけました。

そのおばあさんは、話します。

「・・(略)・・仕上げに、青のりを揉んでボロボロにしてふりかけるんだよ。・・(略)・・昔は、青のりじゃなくて、ハバノリだったんだけどね。今は2枚1500円ぐらいして高いから、代わりに青のりを入れてるんだよ。昔?そうそう、戦前はほんと安かったんだけどね・・(略)・・。」

これを聞いて、僕は確信しました。

ハバノリ。
そういえば、少し前に尋ねた方も、ハバノリの名前をちらっと出していましたが、流してしまっていました。このおばあさんの話で、秦野で「のり」について聞いたことがつながっていきます。

ハバノリについては、「日本の食生活全集14 神奈川の食事」の「小田原<片浦>海岸の食」に出てきます。
僕は、「千葉県のように、海沿いの人たちは、ハバノリを入れるんだなぁ。」と思っていましたが、「海沿いの人」という固定観念のため、秦野市という内陸で「のり」を入れるという発想が欠けていました。

秦野にもお雑煮にハバノリを入れていた方々が、まとまっていたんだ。

と(勝手に)確信しました。

そして、次の日、秦野市を離れ、川音川に沿って延びる246号線を下って、松田町に行きます。

その一帯で、お雑煮のことを聞くと、秦野市より、明らかに「ハバノリ」(青のり)をお雑煮に入れている人が多くなります。南足柄市、松田町、開成町、そして、山北町でも、「ハバノリ」を入れる方は、数多くいました。

なぜ、この内陸に「ハバノリ」を入れる人が多いのか?


より大きな地図で お雑煮マップ 2(関東甲信) を表示

江戸時代までの文化は、自然環境や気候によって、分かれることが多いです。

上記の地図を見ると、小田原市から北に細長く平野(足柄平野)が広がっているのが見て取れます。
足柄平野の真ん中には、この平野を作った酒匂川が流れています。
この酒匂川に沿って、ハバノリが運ばれ、周辺の村々に「お雑煮ハバノリ文化」が広まっていったと考えられます。

※現在でも、このあたりは「小田原都市圏」として、ひとつの圏域になっています。

足柄平野と、川音川でつながる秦野盆地にも、この「お雑煮ハバノリ文化」が流入しているということは、江戸時代、秦野は足柄平野の村々との交流が活発だったのでしょうか?

謎は深まります。

  • ハバノリは、小田原文化圏のものなのか?
  • 平塚や茅ヶ崎でも入れるのか?
  • 三浦半島でもハバノリが採れるので、やっぱりお雑煮に入れるのだろうか?

そのことを確かめに、いつかは分かりませんが、この旅の間に、神奈川県の海岸も尋ねまわる予定です。

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3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

青のりとアオサは違う物です。
地方によって、または商品名として混同されています。
たぶんこの場合はハバの代用なんでアオサなんだと思いますが。
こういうのを調べるのも面白いですね。
サトイモですがNHKのドキュメントで
「人間は何を食べてきたか」というのが有ります。
第3巻「第3集 太古からのメッセージ ~タロイモ・ヤムイモ~」は興味深いですよ。
書籍の方だと「人間は何を食べてきたか アジア・太平洋編 上」かな?

Masato.M さんのコメント...

> 匿名 さん

コメント、ありがとうございます。

そうですね。青のりとアオサは違いますよね。

聞いた方の中には、「青のり」ではなく「アオサ」を入れるという方もいらっしゃいました。

確かに、ハバノリとアオサは似ているような気がするので、「ハバノリの代用」としては、ピッタリのような気がします。

ただ、青のりは、アオサに比べ、スーパーに行けば簡単に手に入るので、その手軽さから、ハバノリの代用として用いられている一面もあると思います。

アオサについては、前回の旅で三重県に行ったとき、「アオサ汁」をいただきましたが、「ハバノリ」は食べたことがありません。
どうも生臭いらしく、好き嫌いが分かれるようです。「青のりの方がおいしい。」と言っている方もいました(逆の方も。)。



実は、僕も「人間は何を食べてきたか」シリーズをきちんと見たいと思っています。

以前、「人間は何を食べてきたか 第5集 大いなるアジアの恵み ―米―」を見ました。
タイの山岳民族の陸稲を取り上げていました。餅を作ったり、収穫のお祝いをしたり、日本と共通するものを感じました。

まだ第3集は見ていないので、今度、見てみたいと思います。

サトイモに関しては、日本でも、米と並び、とても重要視されている食物ですね。
「楢山節考」でも、人んちのイモを盗んだ一家が、村人から処刑されるシーンがありましたね・・・。

お雑煮を調べると、「イモ正月」にぶちあたります。
今度、その時が来たときにブログに書くことになると思います。

匿名 さんのコメント...

茅ヶ崎にお嫁に来ましたが、おばあちゃんのお雑煮は、青のりかけます!
びっくりしました。醤油ベースの汁に大根にさといも、お餅、そして青のりです!

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