青木ヶ原樹海の中を、車で駆け抜けていきます。
やはり車は、自転車とは別世界です。この後、ここを自転車で通りましたが、思ったより遠くてびっくりしました。
富士五湖中、最も小さい湖である精進湖(周囲5km)は、あまり観光業が盛んじゃないうえ、今は観光シーズンではないこともあって、観光客はほとんどいない感じでした。
「ファミリーレストラン ことぶき」に到着。駐車場に車を停め、店内に入ります。
カウンターにいたスタッフの方が、席に案内してくれます。
席に着くと、薄い黄緑色のミントティーを出してくれました。たちのぼる湯気からミントの香りが漂います。早速、一口。すっきりとした爽やかな味で、シャキッとします。
しばらくすると、シェフが厨房から出てきました。
ことぶきのおすすめメニューや、ユニバーサル対応などについて、さとちゃんの取材が始まります。
そして話題は、(僕にとっての!?)核心へ・・・。
ここ精進湖・本栖湖地域では、近年「鹿カレー」を名物にしようと、町を上げて取り組み、ここ「ファミリーレストラン ことぶき」でも一番人気らしいです。
精進湖・本栖湖新名物「鹿カレー」 - 富士河口湖総合観光情報サイト
近年、全国各地で鹿の増殖・農作物被害が問題になっています。
狼が絶滅したためとか、鹿の生息地が狭くなったためとか、温暖化で冬を乗り切れるようになったためとか、いろいろ言われています。
無邪気な人間の餌付けのため、人を恐れなくなったという意見もあります。
これらの解決策のひとつとして、有害駆除される鹿を有効活用するため、最近、河口湖町に「シカ肉加工施設」ができました。ここではそこから鹿肉を購入しているということです。
しかし、このような「ジビエ料理」の提供をすることは、現実には、とても厳しい状況のようです。
シカ肉加工施設の鹿肉は、地元のハンターの方が持ち込む鹿です。
鹿肉は、血が肉の中を巡ると、臭くなってしまうので、捕獲後、2時間以内に施設に持ち込まなければいけません。そのようにして持ち込まれた鹿肉には、1頭1万円の報酬が支払われるということです。
時間制限も厳しいですが、ハンターは、通常、数名で狩りをするらしいので、1頭1万円では割が合いません。
また、罠で捕まえた鹿は、逃げようと暴れ回り、体中に血が駆け巡るため、商品として使用することができず、銃で撃った場合も、引きずって運んだりすると、血が体中を巡って、やはり肉が臭くなってしまうそうです。
一流のハンターは、血が肉に回らないように、頭や首のあたりを撃ちぬき、倒れた鹿をその場で解体して、必要な肉だけを持っていくそうです。
このような状況のため、「シカ肉加工施設」のシカ肉の供給は不安定です。
毎日新聞の記事
シカ肉加工施設:搬入頭数少なく苦戦 ハンター、利用消極的--富士河口湖町
「ことぶき」でも、できれば地元の「シカ肉加工施設」から手に入れたいと思っているようですが、やむなく、他のところから取り寄せることもあるそうです。
鹿肉を使った料理を続けることができるかどうかは、綱渡り状態だそうです。
僕は、今まで、「鹿や猪が増えているのなら、人間が食べればいいんじゃないか。」と漠然と思っていました。いつもそうですが、やはり「甘ちゃん」でした。そんな単純な話ではありません。
かつて、文明開化後の日本で、鹿や猿などをバンバン殺して絶滅寸前に追い込んだ時代もあるように、生き物をコントロールをしようとするのは、僕たち人間の叡智であり、罪でもあります。
取材後、薬膳ほうとうと鹿肉のミートソーススパゲティーを出していただきました。
薬膳ほうとうは、7つの薬膳(朝鮮人参・クコの実・ハト麦・ナツメ・シロキクラゲ・金針菜・松の実)が入っている、みそ味のほうとうです。
さとちゃんが薬膳に詳しく、説明してもらいながら食べたので、ひとつひとつの味を確かめることができました。薬膳についての知識があった方が、ありがたく感じます!?
幅広の麺はコシがあり、みそのスープに絡んでおいしい。ツルツルとあっという間に食べてしまいました。
鹿肉のミートソーススパゲティーは、ミンチになった鹿肉が味を引き立てておいしい。シェフが、「きちんと血抜き処理した鹿肉はおいしい。」と言っていましたが、本当にうまい。
また、パスタには、独特の味付けがしてあり、パスタだけでもおいしくいただけます。
パスタとミートソースを絡ませ、パクっといただきます。
とても落ち着いた味で、噛んでいると口の中に味が染み出てきます。
食べ終わった後、ドサクサにまぎれて(?)、シェフにお雑煮のことを尋ねました。
「お雑煮・・・?うちは、面白すぎるかも・・・。ちょっと待ってて。」
と言って、厨房の中に消えていきます。
面白すぎる・・・? 何だろ?
ドキドキ。鼓動が高鳴ります。
しばらくして、気の良さそうなおじいさんが出てきました・・・。
(続く)