2010/08/24

「芸術で飯が食えるか?」について考える。

先日、友人の伊藤知宏くんと激論したのもあり、ここ最近心にひっかかっているのが、「芸術で食っていけるか?」という問題です。
この高尚な問題について、甘っちょろく、浅はかな、青臭い、僕の考えを書いてみることにします。

僕は、以前、真の「芸術作品」は博物館や美術館で鑑賞するものであって、値段をつけて売りに出す作品は、何かいかがわしい、商業的な匂いのする、真の芸術じゃない。と漠然と思っていました。

しかし、最近、僕の考えは間違っているんじゃないかと疑問を持つようになりました。

なぜ芸術作品に価格表示があると違和感があるのでしょうか?
それはおそらく、美術館や博物館ばかりで絵を見たり、目が飛び出るような金額で名画が落札されたなどのニュースを聞いたりしていたため、絵が身近なものではなく、僕とは別世界のものだと思っていたからだと思います。

芸術で食っていくということは、つまり、作品を売って「お金」を稼ぐことです。
作家が生活するため、作品に値段をつけるのは、しごく真っ当なことで、絵を売る行為は、なんら芸術性を損なうものではないと、今は思います。
そりゃそうですよね。現在、“真実の美・永遠の美”として語り継がれている作品の多くも、当時はパトロンの要請であったり、売り物だったりしたわけですから。
作家は、堂々と値段をつけて、堂々と売ればいいと思います。

—画廊からの発言— 新世代への視点2010」の最終日の8月7日、僕は、「新世代」の芸術を「その視点」から見てみました。

まず、伊藤くんから。
伊藤くんの大きな作品は、約15万円~25万円で売っていました。
買うとなると飾るスペースを考えないといけないため、日本の家には、ちょっと大きすぎます(注:伊藤くんは当然わかっています。)。
しかし、ギャラリーなつかで開催していた「小品展」で、伊藤くんの作品がひとつ売れていました(18,000円)。

この企画展で、最も売れていたのは、「ギャルリー東京ユマニテ」で展示していた富田菜摘さん「さんざん待たせてごめんなさい」の作品です。

等身大作品群と、富田菜摘さん今回の彼女の作品の目玉は、発泡スチロールなどで作った等身大の人形に、チラシや新聞、雑誌などをコラージュして作った作品です。
「Japan Times」のみを貼ったビジネスマン。「少年マガジン」のみの子ども。「折込チラシ」のみのおばさんなど、1つ1つの作品に個性があります。

ミニチュア版コラージュ作品細かいところまで丁寧に作り込まれたミニチュア版の作品もあり、フィギュアみたいで、僕みたいな素人でも十分楽しむことができる作品です。
幕内政治さんのブログに詳しい解説が載っています。


金属廃材で作ったヤドカリたち奥の部屋には、ビール瓶の王冠など、金属廃材を組み合わせて作ったヤドカリなどのミニチュア作品がありました。部屋にひとつ、置いておきたくなるような、かわいらしい作品でした。


壁に貼ってある作品リストを見ると、等身大作品の、「CanCam」のみを貼った女の子(241,500円)を筆頭に、全てのミニチュア版のコラージュ作品(63,000円~189,000円)、金属素材のヤドカリたち(21,000円~31,500円)などが売約済みになっており、価格を合計すると100万円を超えていました。

先日、伊藤くんの紹介で知り合いになった、現在イギリスのスレード芸術大学に通っている木下さんから、ちらっとイギリスのアート事情を聞きましたが、アートの本場であるヨーロッパのイギリスでも、日本と同じく芸術1本で食べていくのは相当厳しいということでした。

考えてみれば、もともとファインアートの世界は、厳しい世界です。
先日、展覧会(シャガールーロシア・アヴァンギャルドとの出会い)を見に行ったシャガールも、若いころは貧乏で、安いニシンばかり食べていたそうですし、今をときめく村上隆さんも、30代半ばまでは、コンビニで賞味期限切れの弁当をもらったりして生活していたなどなど、芸術家の貧乏話は、枚挙にいとまがありません。
貧乏は決して悪いことではありませんが、しぶとく、あきらめずに、自分を信じ、自分の芸術を貫くことは、難しいことです。

現在、日本は、アートブームみたいです。
21日に開幕した、「アイチトリエンナーレ2010」や、瀬戸内国際芸術祭2010、新潟県の越後妻有(越後妻有 大地の芸術祭の里2010)に代表される「里山アート」など、日本各地で、アートプロジェクトが進行中です。
若者向けの雑誌でも、アート旅特集が数多く取り上げられるなど、特に僕たち、20代・30代の若者の中で、アート好きが増えているようです。

ミュージアムカフェニュース:
アート好き若者増えた、美術・博物館の入場者10年で倍増

里山アート等によく行っている友人に聞いたところ、里山アートは、芸術を買うという感覚ではなく、日常から離れた旅の雰囲気のなかで、アートにふれることができることが魅力だと、1石2鳥感覚で楽しんでいました。

僕は芸術に興味がある者として、「芸術で飯が食えるか?」って問題を、実は、けっこう楽観視しています。
日本には、これだけアートを楽しもうとする人たちがいます。
僕みたいな普通の一般人ひとりひとりが、ちょっと意識を変えるだけで、案外、社会って変わっていくんじゃないかなって思っています。
僕個人は、アートメーターのサイトが気に入っていて、ちょくちょくここで絵を見ています。ここの絵なら僕でも買えるかもしれません。もし心安らげる絵を見つけて、僕にも手が届くささやかな価格だったら、ちょっと買ってみようかなと思ったりもしてます(ちょっと今のアパートじゃ厳しいですが(汗)。)

ショッピング感覚で絵を買う習慣が芽生え、ブランド品や、携帯代、フィギュアなどに消えていく多額のお金が、各個人が表現するアート作品に少しでも還元されていけば、アートの中心が、パリでもニューヨークでもなく、東京になる日がやってくるのではないかと思いをめぐらせています。

ゆっくりゆっくり、その方向へ進んでいけばと願っています。

ということで、

伊藤くん、がんばれ!

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4 件のコメント:

狛 さんのコメント...

人形じゃなく菜摘さんと腕を組んでくれれば、写真撮ってあげたのに。(笑)
食パンばかり食べる生活を送るのだから、後は、旅で伝説を作るだけなんじゃない?

Masato.M さんのコメント...

> 狛さん

伝説は、できないと思いますよ・・・。おまぬけエピソードなら、なんとか(汗)。

狛 さんのコメント...

次回のブログのテーマは『「旅で飯が食えるか?」について考える。』を希望します。

Masato.M さんのコメント...

> 狛さん

旅で飯が食えるか??
難しいテーマです。
まぁ僕は「食えない」と確信していますが、たまに熟慮してみます。

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