2010/12/15

「まつや茶房」で「贈与経済」についてほっこり語る。 ~香典帳をなくすべからず。~

鍋会の数日後、鍋会で仲良くなった遠山さんが経営している「まつや茶房」に遊びに行きました。

まつや茶房

店頭のガラス越しに中を覗くと、遠山さんが編み物をしているのが見えました。店の雰囲気の中に、溶け込んでいます。
店内に入ると、小鉄と小梅(猫ちゃんたち)が出迎えてくれました。

履き物屋を改造したまつや茶房は、「昭和」を感じさせるレトロで、アットホームなインテリアに彩られています。
土間で靴(サンダル)を脱いで、店内に上がります。メインの席は、豆炭を使うコタツです。
廃材だった板を加工して作った天板は、手作り感あふれて、とてもしぶい。古いものや、素朴なものが好きな僕は、とても落ち着きます。

雑穀ご飯とトマトのキッシュ(?)こたつに入ると、商品のコーヒーを出してくれ、昼ご飯までいただいちゃいました。

コーヒーの香りがまわりに漂います。コーヒーを一口。さらっとした苦味が口の中に広がり、めちゃくちゃうまい。

自然と、この辺りの習慣の話になりました。

この辺りには、「ご近所付き合い」が残っていて、手作りのおかずなどを、頻繁にもらったりするそうです。

僕がここにいる間にも、ご近所の方が、ちょくちょく顔を出し、「この前は、ありがとねー。」って何かおすそ分けの品物を置いていったりします。

遠山さんが、体調を崩して、特に告知せず店を閉めていると、近所の方から、「風邪でもひいたの?」と電話がかかり、お粥を作って持ってきてくれたりするそうです。

遠山さんは僕と同世代ですが、ここまで色濃く「ご近所付き合い」の習慣が続いているのには、ビックリしました。

中でも、僕の興味を引いたのは、香典帳の話です。

町内の方々は、新聞の訃報欄を常にチェックしていて、今、葬式会場で誰の葬式をしているのか把握しているそうです。
知った名前を見かけると、香典帳を取り出し、以前、自分の家の葬式(お通夜)に来たかどうか、香典をいくら置いていったかを調べ、葬式(お通夜)に行くか、いくら払うかを決めるそうです。
香典帳は、このようにとても大切な物なので、いつも確かめることができるように近くに置いてあるそうです。

※当然、普段から頻繁に交流していた方については、香典帳を調べるまでもなく、葬式に訪れます。

途中から「まつや茶房」を手伝っている(?)相澤さんも話に加わり、

「香典や祝儀は、“貸し借り”だ。」
「日本のこういう習慣は、贈与経済って言うらしい。」

と話していました。

贈与経済という言葉は初めて聞きましたが、確かに、日本には、このような習慣は根づいています。
冠婚葬祭や、お歳暮やお中元(バレンタインデーも、、かな??)など、贈与の習慣は今もしっかり残り、これらは、お返しをするのが基本です。今はどんどんと簡略化、制度化されていっていますが、僕は、このような、ある程度ウェットな人間関係って必要だと思っています。
ドライな貨幣経済とウェットな贈与経済が、共存するのがよい社会なんじゃないかなぁって、素朴に思います。

注:この記事では、日本に残る上記の習慣を、「贈与経済」として当てはめています。

贈与といえば、マルセル・モースの「贈与論」

「贈与」について考察したこの本は、とても面白い本です。

贈与論」で述べられている、ポリネシアや、インディアンの贈与(ポトラッチ)の事例は、今回「贈与経済」に当てはめた、現代日本の贈与とは違っています。

買うと売る、貸すと借りるを意味する語が1つしかない社会、物々交換とは違う「贈与」が交換(取引)の原則になっている社会では、「贈ること、受け取ること、お返しすること」は、義務(ある意味、強制。)になっています。

贈与する物や事には霊が宿り、物や祝宴などを与え合うということは、権威や、名誉、精神、そして、人格をも、取引しているようなものです。贈与への返済を怠ることは、贈与者の奴隷になることを意味するほど、重く厳しいものだそうです。
このような贈与の形態には、正直驚きますが、贈与について考えるのに、いい契機になります。

ポリネシアなどの、貨幣が登場する以前の贈与、イスラム教やキリスト教、仏教など、宗教における贈与(喜捨)、そして、日本に残る贈与習慣。
何かを「あげる」ことは、人間の本質に迫る行為だと気付かされます。

ちなみに、この本の内容を、僕自身、まだ全然理解していません(汗)。僕の拙い文章では、うまく説明できないので、気が向いたら一読してみてください。

最後に、贈与論の中で述べられている、マオリ族の格言を載せておきます。

Ko Maru kai atu
Ko Maru kai mai
Ka ngohe ngohe

「貰ったのと同じだけ施しなさい。そうすれば万事うまくいく。」

こんな感じで、ここで話をしていると、あっという間に時が過ぎていきます。

ほんと、店じゃなくて家に遊びに来ているようです。

「いつでも、まつやに泊まっていってもいいよ。」

という言葉に甘え、今までにもう、2泊しました(汗)。


一昨日の夜も「まつや茶房」に泊まらせていただいていました。

昨日の午前中、じゃらんの取材&写真撮影をしていました。
僕も隣に座って取材を聞いていましたが、遠山さんの、コーヒーについての深い知識やこだわり(豆や焙煎など)には舌をまきました。そりゃ、コーヒーがおいしいわけです。水源が富士山であるここの水は、東京の日野から取り寄せている焙煎豆にピッタリなんだそうです。

猫の手を型どった、バナナブレッドとコーヒー

新作メニューを取材陣にだす前に、写真を一枚。
本邦初公開(恐らく)!
猫の手を型どった、バナナブレッドです。名前は、「小鉄の手(仮)」(250円)。
とてもおいしそうです。

まつや茶房の鼻笛チラシまた、まつや茶房は、日本鼻笛協会富士山友の会の事務局になっています(遠山さんは事務局長。)。
まつや茶房では、鼻笛も購入することができますよ。

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